ビジネスパートナー・華人を理解する

 

華人に関する話

 

商売相手は、日本人ではないケースがほとんどなので、しっかり華人のこと、華人の関係の世界のことは本などを読んで勉強しておいてください。

 日本人とビジネスをするのとは全く違うので相手を知らないでビジネスを始めようとすると本当に痛い目に会います。

 

大手企業はアジア進出をする時には、最初に「華人の関係の世界」のことを学びます。当たり前のことですが、ここを飛ばして痛い目に合う人が多いのです。「華人ってなに?華僑のこと?それなら知ってるぞ!」

 こういう人、実は全然わかっていません。

 

最初に知っておくのは「華僑」という言葉の意味です

 

東南アジアでは、華人と華僑の意味を間違えただけでビジネスを失うリスクがあるのです。

 私もそれだけでビジネスを失った社長さんの話を何度も聞いてきました。

 せっかくうまくいきかけた商談がその後の懇親会で全てパー!

 

その原因が「華僑」という言葉の使い方だったりすることがあるからです。

 

華人とは英語ではチャイニーズと言って中華人民共和国人を含め台湾(中華民国)人や世界各国に住んでいる中華系の人全てを指す言葉です。

 中国人という意味とも違います。

 

中国人という言葉を使う人は多いですが通訳をする場合はケースバイケースで訳を変える必要があるので通訳するのが本当に大変です。

 

中国人という言葉を、日本では4つの意味で使う人がいるからです。

「華人」
「中華人民共和国人と中華民国人(台湾人)の合計」
「中華人民共和国人」
「中華民国人(台湾人)」

の4つです。

 

シンガポール・マレーシア・タイ・インドネシア・・・東南アジア各国の経済を動かし日本商品を大量に輸入して現地で販売しているのが現地に長年住んでいる華人の方です。

 英語では中国人も華人も華僑もチャイニーズと言うため混同する人が多いのです。

 

海外で商売しようというのにその相手が華人でありながらこれからお客さまになるかもしれない相手のことを全く理解しないで、商品を販売しようとするから営業に行っても門前払いをされたり、相手にしてもらえないのです。

 それを一番端的に表す言葉が、「華僑」という言葉の誤解です。

 

 実は現地では、「華僑(カキョウ)」という言葉の日本語の発音を理解できる人がたくさんいます。

 そして華僑ではない自分を華僑だと言われたことに非常に腹を立てて席を蹴って帰ってしまいビジネスが終わってしまうのです。

 気に入らない暴言を言われても、自分が売る方ならまだ我慢するでしょうが、自分が買うほうなら向こうの社長さんも我慢しないです。

 そんな無知な人とは商売をしたくない!そう思う華人の社長さんがたくさんいることを知っておく必要があります。

 

 華人の世界は「関係」の世界です。

 人と人の信頼関係を何より重視します。

 何が正しいか、ではなく、誰が正しいか、信頼する誰が持ってきた話なのかを重視する人と人との関係を重視するのが、華人の関係の世界です。

 

華人の関係の世界では、まずは信頼を勝ち取ることが第一に必要でビジネスの話はその後です。

 

それなのに華人と華僑の違いさえ知らずに、華人の社長のところへ乗り込んで行って「あなた方華僑は・・・」と無知をさらけ出して、大失敗する社長さんが後を絶ちません。

 

日本にもそんなことを書いてある本はたくさん売っているのに・・・そんな当たり前の基本というかこれから相手にする人のことを全く事前に、情報インプットなしで、いきなり海外に行って販路開拓しようとするからうまく行かないのです。

 

ある日、あなたの会社に日本語が全く話せない、見たこともない外人営業マンがいきなり正体不明の原材料を買ってくれ・・・とやってきて買いますか?

 普通に考えて、しっかり日本のことを学んでいる人で、信頼できる人や取引先の紹介がないとまず話を聞かないですよね。

 

「関係の世界」を知らないで海外に出て行くと・・・大変なことになります。

 

華人の方とのビジネスは、関係を作るという気持ちを持つことからスタートです。

 

海外でビジネスをする前に華人の考え方を知っておきましょう。

 

その例として私の20年来の友人「アセアン文具の帝王」の話をします。

1980年代に独立起業して小売店、1店舗のたった1ゴンドラへの文房具の商品供給からビジネスをスタートして現在アセアン某国の最大の文具会社の社長になっている私の友人です。

 その文具の帝王とは、ただのお友達なのですが、彼から学んだことがたくさんあります。その中でも一番参考になったのは、華人が大切にする4つのことです。

 

「華人が大切にするもの上位4つは皆同じだ。忘れることがないように・・・」

と彼に教えてもらった、華人が大切にする4つとは次の通りです。

 

・1番目に大切なのは、「親」
・2番目に大切なのは、「家族」
・3番目に大切なのは、「親族(一族・ファミリー)」
・4番目に大切なのは、「ラオ パンヤオ(老朋友)」

という考え方です。

 

ラオ パンヤオ(老朋友)とは「古き友」のことで、長い時間をかけて信頼関係を作り上げてきた友のことです。

 

大切なのは、「長い時間をかけて構築されてきた信頼関係のある人」であって、お金のためには人をだます人がたくさんいる中で、信頼できる関係の人とだけビジネスをしたい・・・というのが「関係の世界」の考え方なのです。

 

初対面の人とは、ビジネスを開始する前に時間をかけて信頼関係を作るのが先、そう考えるのが華人です。

 

1980年代アセアン文具の帝王が中国でOEM工場を探して歩いた時の話です。中国で文具を大量にOEM発注する工場を探す必要があった文具の帝王。

自分は購入者であり、お金を払うお客の立場です。そして、信頼ある工場を探しに中国へ。工場を回りながら彼が最初にやったのは発注先である工場の経営者と10回食事をしたことなんです。

 

10回食事をして、信頼できる人物かどうかまず確かめる。

「これをやらないから日本人はだまされるんだ」と教えられました。

 

最初に強い信頼関係を作れば、長いビジネスになるのでだまされることはない、という考え方で「相手が自分を信頼してくれたかどうか判断する基準が2つある」と教えてくれました。

 

相手が自分を信頼してくれたかどうか、相手の信頼を獲得したかどうかは、「相手が自分に家族を紹介」してくれたかどうか「相手の自宅に招待」されたかどうか、この2つが重要なポイントだと教えられました。

 

そうやって信頼関係を構築してから営業をする・・・ということが分かっている営業マンと日本風ビジネススタイルでメールを使って商品を売ろうとする営業マンでは、信頼関係の獲得に最初から大きな差がついてしまいます。

 

そんな華人の関係の世界において、一瞬で信頼関係を失い、ビジネスをなくした日本人の話、それが「華僑」中国の普通語読みで「フアチャン」という言葉です。

 

お酒が入って会話で華僑を連発。

 食事会が終わった後に・・・「今、彼はカキョウと何度も言っていたな!私のことを華僑(フアチャン)と言っていたのか?」

 「私は華僑ではない。そんなことも理解せずに東南アジアでビジネスをしようとしているようなヤツなのかあいつは!?」

となり、その食事会で全てが終わり。

 2度と会ってもらえない・・・そんなことが知らないところで起きているんです。

 

「彼が日本にいて誤解しているのは仕方がない。しかし東南アジアまでやってきて、そこに商品を売ろうとしているのに相手のことを全く理解しようとしていないのが問題なんだ。彼は一生私達を理解しようとはせず、商品だけを売って歩くような人間だろう・・・そんな信頼できない人間とビジネスをする気はない。」

 そう言って席を立って去ってしまい2度と会うこともできなくなってしまうのです。

 

華人とは?

華僑とは?

その言葉の定義は、しっかり中華人民共和国の中国共産党政府がしています。

 

華僑とは「中国大陸・台湾・香港・マカオ以外の国家・地域に移住しながらも中華人民共和国の国籍を持つ漢民族」を指す呼称です。

 

そうなんです!

 華僑とは、中華人民共和国のパスポートを持っている人で海外に出稼ぎに行っている人を指すんです。

 タイ・マレーシア・インドネシア・シンガポール等で何代もビジネスしている人は、華僑のような出稼ぎ労働者ではなく現地人として誇りをもっている現地の人なんです。

 中国以外にいる中国系の人を華僑と呼ぶ訳ではありませんし中国から飛び出して何代も現地で住んでいる中国系の人を華僑と言う訳ではないのです。

 

自分の国にいるのに、海外から売り込みに来た、その程度のことさえ知らない営業マンに面目をつぶされ時間も奪われ・・・2度と会ってもらえないのは当然です。

 

これくらい説明しておけば華僑という言葉を間違って使い続けて肝心なところで大失敗する人が出て来ることはないと思うので、繰り返し説明しました。

 現地で、言葉の使い方を間違えないようにして下さい。

 

そして、華人という言葉をしっかり理解いただいた後にもう一つ言葉のうっかりでビジネスを失いかける話をしておきます。

 

それは、中国人という言葉です。

 

2つの中国問題は、ほとんどの人がご存知だと思います。

 中国人というと中華人民共和国人と中華民国人(台湾人)の総称です。

 そのどちらか片方を指して中国人と言う人もいれば、台湾は中国の領土だという日本人の人は総称として中国人と言われます。

中国人=中華人民共和国人で、中華民国人を台湾人として分けて使う人もいます。

 どちらが正しい、というつもりはありませんが、2つの中国がこの世にはまだ存在していて中華民国を中国と認めて国交を、結んでいる国が世界にはまだまだあります。

 それを全く意識せず台湾系の人に対して中国人は・・・という話をして、実はその中国人とは中華人民共和国人のことだった、という失敗をする人が多いのです。

 

1972年(昭和49年)に上野にパンダがやって来た頃に中華民国の首都台北にあった日本大使館をなくして、中華人民共和国と国交を田中角栄さんが結びました。

 そして中国と言えば中華人民共和国をイメージする人が多くなりましたが、台北を首都とする通称台湾人の方のパスポートにはしっかり中華民国と記載されています。

 中華民国は蒋介石さんが建国の人として有名で、中華人民共和国は孫文さんです。

 因みに、中華民国の方は中華人民共和国を決して中国とは呼びません。

 中国=中華民国ですから・・・中華民国の方は中華人民共和国を「大陸」と言われます。

 会話をすると、大陸(タールー)という言葉が良く出てきますので注意して聞いてみてください。

 

この微妙な中国人という言葉を理解しておかないと、中華人民共和国=中国、として会話をすると台湾系の方はとんでもなく不愉快な思いをされるので、ちょっとした失言でビジネスがパー、なんてことになりかねないので注意が必要です。

 台湾系の方の前で中国人=中華人民共和国人という会話は大NGワードです