執筆・連載情報⑥


食品新聞連載(6)

2019年12月13日掲載 1面です。


食品輸出のマクロ情報を知っておく


 

 書き下ろし原稿は下記からご確認ください。


食品を輸出するには食品輸出に関するマクロ情報を知っておく必要がある。

 

どんな商品がどれくらいどんな国に輸出されているのか。どの国なら自社の商品を輸出するのに可能性があるのか。そして過去からどのように輸出金額が増加しているのか。国の輸出目標はいくらなのか。そして食品を輸出するにはどんな規制が存在し、行政は一体どんな支援をしてくれていて、どこに問い合わせれば色々教えてもらえるのか。そういうことを事前に知っておく必要がある。

 

食品輸出金額は農林水産省が実績を毎年発表している。「農林水産省 輸出実績」と検索すれば一番上に出てくる。そして「2018年の輸出実績は9,068億円。前年比12.4%増加。2019年の目標1兆円。」と書かれている。国別の輸出金額の実績では「1位香港。2位中国。3位米国。4位台湾。5位韓国。6位ベトナム。7位タイ。8位シンガポール。9位フィリピン。10位オーストラリア。」と記載されている。

 

品目別輸出では一部その他商品を除き輸出実績は、「加工食品3527億円。畜産品659億円。農産物1474億円。水産物3031億円。」と記載されている。加工食品より生鮮品のほうが多く輸出されている。加工商品の輸出金額は思うほど伸びず、生鮮品の輸出金額が伸びているのが現状である。行政による支援は農林水畜産事業者向けの支援が充実していると言えるが、加工食品メーカーによる海外販路開拓の取り組みが充分行われていないという側面もある。

 

農林水産省が2020年のあるべき姿1兆円を発表した当初の数値はその他数値を除き「加工食品5600億円。畜産品250億円。農産物550億円。水産物3500億円。」であり2012年の実績が「加工食品1430億円。畜産品50億円。農産物130億円。水産物1700億円。」という実績であったことを考えると、この6年での輸出金額の伸びは全体が2.0倍で「加工食品2.5倍。畜産品13.2倍。農産物11.3倍。水産物1.8倍。」ということで畜産物と農産物が大きく伸びて2020年の1兆円の目標を達成しそうだと言える。加工食品の輸出金額は2.5倍になっただけである。

 

また少し前の数字だがこんな数字がある。三井物産戦略研究所さんが2014年に発表された「世界主要国の食品製造業概況」という数字である。この数字によると、「世界の主要73ヶ国の食品メーカーは年間約683兆円出荷して約106兆円(15.5%)を輸出している。」そして「日本の食品メーカーは約36兆円出荷して0.4兆円(1.4%)だけ輸出している。」ということは、日本の食品メーカーが世界平均の15.5%を輸出できれば加工食品だけで年5.6兆円輸出できたということになる。加工食品の国の2020年の輸出目標が5600億円で加工食品メーカーの輸出平均からの理論値は5.6兆円なのに、日本の食品メーカーは3527億円しか輸出できてないのが現状である。

 

日本は島国で不利な状況にはあるがまだ10倍以上輸出を狙える可能性はある。要はまだまだ取り組みが充分ではないのである。

 

この一番の原因は「多くの食品メーカーの食品添加物のグローバル対応が遅れていること」であり、2番目は「多くの食品メーカーの賞味期限のグローバル対応が遅れている」ことにあるというのがこれまでの経験から言える。

 

行政が必死にマッチング支援はしてくれているのに、食品メーカーのほうがこの支援を取り込めていないのである。世界どこでも売れる商品を最初に商品開発してから世界に売ればよいのに、日本向けに作った商品を海外に売りつけようとしているため、添加物規制に引っ掛かり輸出できないために輸出金額が伸びていないのである。

 

国によっては日本のように厳しく決まりを運用していない国もあり、特例基準で同一商品を一定個数までは輸入できたりする国もある。そして正式な検査や書類を経ないで裏ルートで輸入して販売している会社も現地にはある。

 

日本で売っている食品をそのまま添加物調査なして輸入できるのは食品添加物の基準の運用が厳しくない「香港・シンガポール・マレーシア・カンボジア」くらいである。

 

これらの国は色々な例外基準があるため裏面表示の確認だけで、一部認められていない食品添加物を使用してさえいなければ輸入できるのである。しかしそれは特殊な話であり、通常の食品輸出は添加物のグローバル対応が必要となる。

 


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