執筆・連載情報⑨


食品新聞連載(9)

2019年12月20日掲載 1面です。


食品輸出 直接輸出と間接輸出のメリットとデメリット

 

 書き下ろし原稿は下記からご確認ください。


海外に食品を輸出する場合、海外のディストリビューターに直接商品を売る直接輸出取引と、日本国内の輸出商社に国内取引で商品を売る間接輸出取引がある。

 

海外の小売店に直接売るのも直接貿易であり、そのために国内で商品を渡すのは間接貿易になる。直接貿のメリットは店頭価格が下がりたくさん売れることであり、間接貿易のメリットは面倒くさい貿易関連業務がないことや販路拡大をスピード化できることである。

 

面倒くさい貿易業務とは、FOB価格やC&F価格での見積もり作成や、英文での輸出取引契約書の作成、海外与信管理・海外売掛取引管理や添加物の確認や輸出書類の作成などである。

 

ただし間接貿易はスピード感がある。多くの国に販売できる魅力的な商品を開発できれば食品輸出商社から多くの引き合いが入り一気に多国販売が実現できる。しかし直接貿易にも取り組んでいかないと店頭価格が下がらず、売れない商品になってしまう場合がある。直接貿易・間接貿易は両方取り組む必要がある、というのが結論である。

 

間接貿易は国内営業であり、持っていく資料は国内営業とは異なりますが、今まで営業してこなかった先に国内で営業すれば良いだけで簡単な話である。しかし、そもそも食品添加物のグローバル対応や賞味期限のグローバル対応ができていない商品を持って営業しても話は簡単にはまとまらない。海外対応していない食品を持って営業に行ってもあまり意味はない。

 

直接貿易は、海外の企業と直接やり取りが必要になる。そのため国境を越えたグローバル営業力を上げる必要がある。しかし、輸出商社を通さず国内の自社工場でバンニングすれば現地のディストリビューターの購入価格は劇的に下がり店頭価格も下がる。以前行った試算では、海外の店頭価格が3割下がる。そして売れ数が上がる。これが直接貿易の最大のメリットである。

 

結論を言ってしまうと直接貿易と間接貿易には両方取り組む必要がある。自社で徹底的に攻める国は直接貿易を行い、そうでない国は間接貿易を進めるのが良い。

 

直接貿易するには、ディストリビューターやその先の小売や飲食チェーンにもディストリビューターが商品提案できるように準備をしておく必要がある。そういう提案書類も含めて準備が必要となる。

 

多くの日本の食品メーカーは食品輸出商社に頼りきってしまい自社で海外へ直接営業に行こうとしないし、英語や中国語など多言語の営業ツールの準備をしない。日本の食品メーカーはモノ作りは高いレベルにあるが国境を越えたグローバル営業力のレベルは海外の食品メーカーには到底追いつけないレベルにある。

 

国境を越えて食品を売るグローバル営業力も世界に売れる商品を開発するグローバル商品開発力も、海外の食品メーカーと比べると低い企業が多い。

 

アジアの日系以外の小売業の店舗を見ると、日本の食品は少ないがアジア各国の商品はたくさん並んでいる。海外の食品メーカーは添加物を番号管理しているが、日本の多くの食品メーカーは添加物メーカーや添加物卸から添加物をミックスした原料を購入し、表示方法を教えてもらい、自社で添加物の番号管理をしていない会社が多い。その段階で輸出を取り組む準備がそもそもできていない。

 

話は変わるが、輸入規制が高い国の代表例としてはインドネシアがある。インドネシアへの輸出金額は非常に少ない。その理由は非関税障壁が色々あるからである。インドネシアは商品の裏面情報だけは輸入の可否判断はできず添加物情報を提出する必要がある。

 

また商品毎に登録番号をインドネシアで取得し、その登録番号を記載した現地語の商品ラベルを作成し、日本で商品全て添付してから輸出する必要がある。更に輸出前に検査官がバンニングの場所にやってきて確認を受ける必要がある。

 

その際、賞味期限や個数が事前申請した書類と不一致だと当日の輸出が取りやめになる。かなり細かい輸出準備作業が必要となる。私は自分でインドネシア最大の日本食品ディストリビューターにコンテナ単位で食品を輸出していたが、この作業には本当に神経を使った。

 

更に商品パッケージが変更になると新規商品となりまた登録番号を取得する必要がある。その取得には半年以上の期間がかかる。

 

商品のパッケージが次々と変わる日本の食品はとても輸出することができない。海外の専用商品を作る必要がある。実際にインドネシアの小売の店頭を見ると昔日本で見たようなパッケージの商品を見ることができる。輸出商品は旧のパッケージを使うことでその壁を乗り越えているメーカーもある。

 

また、ある大手菓子メーカーはバルク状態で輸出して現地でパックをすることで現地化に成功している。インドネシアへの輸出は色々と研究して動かないと非常にハードルが高いのである。

 

本サイト「食品輸出の学校」には4つのLEVELに分かれ、LEVEL1には多くの無料コンテンツがあります。詳しくは、こちらをご確認ください




結論から申し上げますと、食品輸出成功のキモは「食品添加物の海外対応」と「販売期限の海外対応」です。日本と海外では使える食品添加物が異なります。海外主要18カ国で使える食品添加物の種類は平均307であり、日本は828です。日本の仕様のままでは例外規定のある国か運用ルールの厳しくない国(香港・シンガポール・マレーシア・カンボジア等)にしか輸出できません。特殊な日本の消費者向けの賞味期限をグローバルな形に修正する必要もあります。詳しくは下記から学んでください。