執筆・連載情報⑯


食品新聞連載(16)

2020年1月24日掲載 1面です。


食品輸出 海外のディストリビューターに直接売る準備


 

 書き下ろし原稿は下記からご確認ください。


海外企業に直接販売するということは輸出取引をすることになる。そのため国内営業だけで食品輸出商社に営業して海外に売る方法より難易度が上がる。当然事前に準備することも出てくる。

 

海外に直接食品を売るには、自社でバンニング(コンテナに商品を入れること)して、海外の指定の場所に届ける必要がある。その業務を代行してくれるのがフォワーダー(乙仲)である。

 

先日紹介したジェトロのサイトに食品輸出を支援してくれる多くのフォワーダーが記載されているのでフォワーダーは簡単に見つけることができる。

 

ドレージ(コンテナを港から御社の倉庫までもってきてもらい持って帰ってもらうこと)費用とバンニング費用と船に積んでもらう費用と各種手続きや書類発行費用の合計であるFOBコストは常温20フィートコンテナの場合は概算で10万円ほどである。

 

20フィートコンテナに10,000個商品を入れることができるなら1個当たりのFOBコストは10円である。そのためFOB価格を出すことは簡単である。C&F価格にするには、先方の港までのコストを足すだけである。フォワーダーに聞けばすぐに分かるので実務は難しくはない。

 

大変なのは保険の対応であり売買契約書の準備である。

 

海外に商品を売る場合、前払いしてくれる会社はほぼない。特に現地でしっかりディストリビューター業務をしている企業であればあるほど前払いすることはない。日本食品の海外取引の支払いサイトはBL(船荷証券)45日後払いか月末締め翌月末払いが多い。

 

そのため海外の企業に売掛取引をすることになる。この売掛取引をするかしないかの意思決定が難しいのである。

 

保険でリスクヘッジすることもできる。海外取引信用保険を使えば先方が支払いをしない場合、保険会社がお金を支払ってくれる。この海外取引信用保険はコストが高いので、そのコストを商品価格に乗せる必要がある。

 

この保険のコストを落とすには商工会議所で申し込むことである。御社指定の保険営業マンに商工会議所に行って、海外取引信用保険の情報と海外PL保険の情報を取って来てもらうのである。商工会議所経由で保険に入ったほうが安く・定額枠で加入ができる。

 

保険の営業マンには海外PL保険に入ることで勘弁してもらい、海外取引信用保険に加入するかはおいておき、与信調査だけは実施するのである。海外取引信用保険の加入前には先方の与信調査を必ずかける必要がある。

 

それに合格すれば、売掛取引を検討し、不合格の会社には前払いでの取引をするのが基本となる。

 

また、売買契約書が輸出のリスクヘッジの大きなポイントとなる。輸出取引のかなりの部分をこの売買契約書でリスクヘッジをするのである。

 

海外の細かい法律やルールの違いを日本で理解するのは不可能である、現地の専門家であるディストリビューターに任せる他ないのである。そして遵法性については売買契約書で押さえるのである。食品輸出の場合の売買契約書は売主が圧倒的に強い立場になる内容にしなければならない。そうしておかないとリスクヘッジができないからである。

 

日本の売買契約書では見ることができないくらい売手が圧倒的に強い契約書で私は海外のディストリビューターと契約締結をしてきた。それには色々とコツがある。そのあたりの詳細は「食品輸出実務と実践塾」で解説予定である。

 

そして、実際に直接海外に食品を輸出するビジネスフローを知っておく必要がある。『直接海外に食品を輸出するビジネスフロー』は下記の通り12段階ある。

 

●は輸出者である御社がすることで、◎は海外の購入者であるディストリビューターがすることである。

 

①◎購入者が商品に興味を持つ。②●◎価格を提示し支払い条件に合意する。③●サンプルを送付する。④◎商品と輸出数量を仮決めする。⑤◎商品が輸入できるか確認する。⑥(必要であれば)◎行政へ商品登録する。⑦(必要であれば)◎商品登録が完了する。⑧◎数量を確定する。⑨●◎最終諸条件に合意する。⑩◎PO(発注書)を発行する。⑪●◎売買契約書を締結する。⑫●商品を製造し輸出する。

 

⑥⑦は国によって必要な国とそうでない国がある。

 

この流れは「日本食品を世界で売る会」のホームぺ―ジでフローチャートにして日英2ヵ国語版として公開している。その資料をそのまま使用し、ディストリビューターと取引の流れとして交渉初期段階で情報共有すると便利である。

初めて取引する海外のディストリビューターと今後どのように話を進めていくのか、双方で理解をしてお互いにやることを決めておくと話を進める際に非常に便利でありディストリビューターに好評である。

 

直接海外に商品を売るにはハードルがあるが、国内の食品輸出商社への輸出と直接海外のディストリビューターへの輸出という2つの方法は車で言えば『両輪』である。両方やっていかないと簡単に年間1億円以上輸出することはできない。

 


食品輸出、海外販路開拓、海外向け商品開発をテーマに、講演やセミナー行います。講師の出張派遣も行います。また個別コンサルティングについても、お気軽にこちらからお問い合わせください。



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