執筆・連載情報⑭


食品新聞連載(14)

2020年1月20日掲載 1面です。


食品輸出 世界に売るための販売期限の考え方

 

 書き下ろし原稿は下記からご確認ください。


コンテンツの一部を下記で公開しています。


食品には、その販売期間によって賞味期限又は消費期限と記載するルールになってることは皆さんご存知である。賞味期限の意味を一言で言うと『美味しく食べられる期間』であり、消費期限は『安全に食べられる期間』である。賞味期限より消費期限が長い、というのはその言葉の意味からご理解いただける。では、海外ではどう考えどう表示しているかご存知だろうか。

 

それをご理解いただくには、まず世界の食品のルールであるCodex(コーデックス)でどう記載されているか理解いただく必要がある。

 

賞味期限の定義は日本の認識と近いが消費期限の認識は少し異なる。コーデックスでは賞味期限と使用期限として定義されている。この使用期限が日本の消費期限の考え方に近い。

 

使用期限(Use-by Date)の定義として、最終消費推奨日(Recommended Last Consumption Date)と有効期限(Expiration Date)としてこう定義されている。「推定期間の終了を意味する日付を意味し、その後製品は消費者が期待する品質属性を持たず、市場価値がない。」とされている。要は食べきる日という意味であり、日本の消費期限の考え方である「安全に食べられる期間」よりも長く感じられるニュアンスで定義されている。そのため海外の食品の有効期限表示は長いのである。

 

日本人の多くは日本の食品の品質レベルが高いと思っている。実際その通りなのだが、海外ではそう思っている人ばかりではない。日本では4~5ヶ月の賞味期限のスナック菓子が海外では18ヶ月の有効期限表示で販売されている商品もある。例えばマシュマロは日本の最大手メーカーは5ヶ月の賞味期限で、海外のメーカーは18ヶ月の有効期限表示をしている商品もある。

 

そして海外の食品業界の一部のでは「日本という国は劣悪な環境で食品を作っているから販売期限が短い」と言い、日本の食品の品質レベルは極端に低いとい考えている。

 

因みに、日本の食品メーカーでも海外で商品を大量に販売している企業や、海外に本格的に進出している食品メーカーは当然のように日本と海外で販売期限の考え方を変えている。毎日日本食品を食べ、味にうるさく、クレームが多い日本人に合わせた美味しく食べられる期間と、日本食品をめったに食べない、味にうるさくなくクレームを言ってこない海外の人向けの有効期限が同じ期間の訳がないのである。

 

それを分かった上で、日本と異なる販売期限を設定している食品メーカーもある。

 

ところが、そんな事情を理解していない食品業界人が、「あのメーカーは輸出商品の販売期限が長くなる不思議な会社だ。」などととんでもないことを言うのである。全くの勉強不足で海外に売る機会を逃しているだけである。

 

物流事情が悪く路線便もない海外の国で、日本と異なり数少ない食品メーカーが自社商品を遠方まで届けるには長い日付を打つ必要があるためである。

 

海外では有効期限で表示する食品メーカーが多い。実際に食品に記載される賞味期限は英語表記では「BEST BEFORE」と書かれることが多く、消費期限は「COMSUMED BY」と記載され、有効期限は「EXPIRE DATE」と記載されることが多いが主流は有効期限表示である。

 

日本であれ海外であれ、店頭の棚には国産品と輸入商品が入り乱れており、小売店は当然ながら有効期限表示の商品も賞味期限表示の商品も消費期限表示の商品も、同じ扱いで日付管理をする。色々な言語で書かれている商品をいちいちどの期限表示か確認して管理ができないからである。

 

そして海外の小売店は表示してある日付(賞味期限や消費期限や有効期限)の2ヶ月前には棚から商品を下げてディストリビューターに返品する企業が多い。

 

あなたが仮にせんべいを輸出したい食品メーカーだとして、日本で自社の商品の賞味期限を仮に4ヶ月表示して販売しているとする。日本で製造した商品を海外に出荷したら製造日と出荷日の期間もあり、海外に商品が着いたら2ヶ月経過している。そしてその商品が店頭に届くと、残りの販売期限は2ヶ月なので小売に納品した瞬間に返品されるか入荷拒否を受ける。

 

この消費期限と消費期限と有効期限の違いを、日本の食品メーカーに教育して欲しい・・・私は海外のディストリビューターの責任者から何度も何年もそう言われ続けてきた。「なぜ、日本の行政はマッチング支援ばかりして、肝心な海外向けの商品開発について何も教育をしないのか?」そう言われ続けてきたのである。

 

因みに、食品を海外に輸出するには日付の壁が存在する。その壁は、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月である。それぞれの販売期間を越えれば輸出できる対象国がどんどん多くなる。ディストリビューターも食品輸出商社も販売期間で売り先を考える。

 

長い販売期間を設定できれば輸出できる距離が伸びて市場が広がると理解し、真剣に取り組んだ食品メーカーが世界市場を攻略できるのである。

 

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結論から申し上げますと、食品輸出成功のキモは「食品添加物の海外対応」と「販売期限の海外対応」です。日本と海外では使える食品添加物が異なります。海外主要18カ国で使える食品添加物の種類は平均307であり、日本は828です。日本の仕様のままでは例外規定のある国か運用ルールの厳しくない国(香港・シンガポール・マレーシア・カンボジア等)にしか輸出できません。特殊な日本の消費者向けの賞味期限をグローバルな形に修正する必要もあります。詳しくは下記から学んでください。