日本の流通事情の特殊性


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日本の流通事情の特殊性

 

「日本と海外の流通事情の違い」というか「日本と海外の流通事情の特殊性」について

 

日本の流通事情が特殊とは、流通の仕組みが全く違います。

それを理解しておかないと気合と根性で頑張るしか販路開拓ができないです。日本で新しくスーパーマーケットを開店すると加工食品は大手2社と取引すれば全ての商品を仕入れることができます。日本は卸から購入すれば、全ての仕入れが完結します。しかし、これは日本だけです。


日本は、モノ作り大国です。

工場が沢山あります。そのため、メーカーが直接小売に売るよりも卸という機能が発達しました。海外では卸(問屋)というものが存在しません。小売業はメーカーと直接口座を開設して取引をします。

 

海外のスーパーは数百社、いえ1000社以上と普通に取引しています。

卸という便利だけど中間で利益を抜いていく営業代行業は、海外ではメーカーの数が少ないから成り立たないのです。1億2000万人もいる多様に細分化された日本の消費者に対応するためメーカーがたくさん存在するという背景で成り立っているのが日本の卸売業です。日本独自の流通業態が卸(問屋)です。

 

これは食品に限らず衣料品も家庭用品もヘルス&ビューティケア商品も同じです。全て小売はメーカーと直取引です。海外では工場を持たない会社がOEMで商品を製造委託して、自社商品として販売者名を商品に入れて販売したくても、卸も路線便もないから自社物流網を別に考えないと店頭まで商品を届けることができないため、自社OEM販売することが簡単ではないのです。

 

日本なら問屋や物流会社に頼めば簡単に全国に配送できて、全国流通させることが可能です。路線便なんて便利なものは海外にはありません。海外ではメーカーや輸入販売店は、自社物流網を最初に構築してから販売をスタートする必要があります。海外で小売市場に商品を販売したいメーカーは工場を作るだけでなく自社物流網を作ってからでないと事業に参入できないので、初期投資コストが大きくて新規参入者が少ないのです。日本はOEMで誰でも販売者としてメーカーになれる基盤が既に出来上がっているのでたくさん商品があって販売競争が非常に激しい・・・という背景があります。

 

海外は製造業への新規参入するには非常にハードルが高く、事業者数が少ないためどうしてもメーカーが流通業に売ってあげる・配分してあげる、という状況になるため店頭で販売できる商品数が日本より少なくなり、小売店に採用されるハードルは日本よりも厳しくなるのです。

 

海外ではメーカーの数が少ないので、人気商品は供給量が不足しています。

メーカーが小売に対して非常に強いため完全な殿様商売の世界です。そのため食品メーカーは品切れに対する意識が非常に少なく、納品してやっている・・・という状況で小売業が、メーカーの配給を甘んじて受けている・・・そんな状態です。

 

そして、アジアでは返品OKというのが小売業の基本取引条件です。

何でもかんでも返品されるというのが普通です。そして小売りは棚貸し業のような存在です。ラック・ジョバー(Rack Jobber)のイメージです。小売業が大きな数量を発注してもメーカー側が返品を恐れて数量をカットして納品するのです。そのため納品率も低いのですが背景には、メーカー側が小売側を支配しているから起こるという事情があります。

 

更に小売側の発注もかなりいい加減なのでプロモーター(メーカー派遣社員)やルートセールスが、数量を起案して売場担当者に発注するように依頼することが多いです。そのためプロモーターもルートセールスもいないと、お店の店頭から商品がすぐに消えてなくなります。日本のような棚割りが機能している小売店は少ないです。数量をしっかり決めて、小売が自分で発注する・・・そういう話があるのは日本や先進国のチェーン店くらいの話なのです。お店が適当に発注すると100個発注して納品、翌週に100個納品、しかし店頭に商品は1つもなく半年たって200個返品。こういう信じられないことが普通に発生します。

 

そのためメーカーはプロモーターやルートセースルに小売のバックルームを入念にチェックさせて棚割りがあろうがなかろうが関係なく店頭に全ての在庫を陳列する・・・ということがどこでも行われ、売場の陳列やメンテナンスにメーカー側の人員がさかれるので店頭価格が高くなる・・・そんな傾向にあります。

 

 更にFOCの文化があります。

FOCとは、Free of Charge(無料・おまけ)という考え方です。商品を購入するとおまけに皿がもらえる・・というようなプロモーションがどんどん行われます。それだけでなくメーカーが小売に対する価格提示も、このFOCで調整されることが多いです。

 

驚くことに東南アジアには小売全社に対して全て同一価格で商品を販売している会社がたくさんあります。

 

全社に同じ価格で販売するなんて!と、思われる人も多いですが、でもそうしている会社が多いです。

 

メーカーが小売に出す条件提示は、全社同じ価格です。

そして、その出荷コストに差をつけるのがこのFOCなんです。20ケース仕入れたら2ケースおまけ・・・というやり方です。日本風に言えば、メーカーから小売りへの卸価格は全社100円で統一。そうしないと小売り毎に価格を変えて卸したら管理するのも大変だし、海外では何でウチが高いんだ?って大変なことになってしまいます。そして売渡し価格を一緒にしてFOCとリベート契約で調整しています。小売りに100ケース納品したら10ケースおまけの会社と2ケースおまけの会社がある・・・という感じです。メーカーが小売より圧倒的に強いためにこのようなメーカー主導の交渉が普通に行われています。小売の寡占化が進み大手小売業が力を持ってくると、このような条件提示がなくなって、普通になっていくのですが、パパママストアがまだまだ多いアジアでは、これからの話です。

 

また、店頭で顧客に対するFOCはPWGという言い方もされ、かなり頻繁に行われます。

Purchase with Gift(買ったらギフトがもらえる)というプロモーションは商品に取り付けるだけでなく、スーパーの受付やサービスカウンターやレジなどでの手渡し企画も多いです。小売側は、ギフトの品切れや余りの在庫スペースの問題で苦労しています。1個買ったら1個無料というプロモーションも行われます。日本なら5割引としますが海外では1個買ったらもう1個無料で差し上げる、という感じです。

 

PWGの他にPWPという企画も多いです。

Purchase with Purchase(買ったら買える)というプロモーションで10個買ったら、この希少な商品やギフトが100ドルで買える、というものです。日本風に言えば当社のチョコ20個買ったら1000円でオリジナルグッズが店頭で購入できます!というようなプロモーションです。

 

このような企画をメーカー側がたくさん仕掛けます。

小売に連絡もなく突然商品に5個買ったらお店でお皿が100円で買えます!と印刷された商品がお店にやってきて肝心なお皿がお店になくて大騒ぎに・・・なんてことが頻繁にあります。メーカー側が強いので小売りがクレームを言っても「では商品供給を止めます!」で終わりです。メーカー側はテレビコマーシャルをやっているので、お客さんからの問い合わせも多く、小売は泣く泣く受け入れるしかない・・・そんなメーカー側の天国みたいなところです。

 

日本はメーカー側が店頭を使ったプロモーションを行う、ということは少なくビールメーカーなどの大手がたまに行うくらいですが、海外はメーカー側と小売が直取引なのでそんな企画をどんどんメーカー側がしかけます。

スーパーのエンドを2週間お金を払って借りてプロモーションをどんどんしかける・・・そんなことが普通に行われています。そのため日本より楽しい売場ができあがります。ただ販売員(プロモーター)だらけでお店を歩きにくいのですが・・・(笑)

 

また登録料という日本にはない習慣がある小売業が沢山あります。

特に店舗数や仕入量が多い小売店だと高額な登録料を求めてくることを知っておく必要があります。登録料とは商品1アイテム毎に小売りのマスター登録に対して料金を徴収すると言う考え方です。国によってはコンビニにもなると1アイテム登録するのにとんでもない金額の登録料を要求されることがあります。海外における日本商品は少量多品種型の品揃えになることが多いので登録料を取る小売店に商品を並べるのは大変です。店頭価格が高くなるのは自社物流網にプロモーターのコスト、返品保証、登録料、全てメーカー側が負担するので、店頭価格が高くなってしまうという理由が背景にあります。それを理解しておく必要があります。


海外と日本の流通事情の違いをしっかり理解すると、こんなこともできるようになります。

物販テナントさんなら、自ら投資して出店を考えるより、適したディストリビューターがJVを組んで海外進出したほうが、初期投資もかからず多店舗展開できる・・・という話です。この物販店舗を一気に多店舗展開する方法は、海外に法人を設立し自社出店する方法でも、FCでもなく一気に店舗を拡大する方法です。海外に出店するには、出店規制・輸入規制・高い家賃をクリアする必要があります。

 実際にハードルは高いです。

 

2014年ある物販オーナーさんが相談しに来られました。何度海外視察をしても店を出すことができない・・・その社長は、そう悩んでいました。完全に出店前提で動かれていたので、アドバイスをしました。

『デパートも量販店も、店頭にある商品は小売りの在庫ではありませんよ・・・だから・・・』

そして、どうやっても海外出店できなかったある物販オーナーが、短期間で6ヶ国(中国・マレーシア・シンガポール・ベトナム・インドネシア・カンボジア)に低コストで出店されました。

そんな方法もありセミナーでお教えしていました。物販チェーンオーナーさんの設備投資無しで海外にどんどん出店する為の物販チェーン関係者さん限定の非公開・秘密のセミナーでした。

 

あの100円ショップが次々と海外に出店できているのは何故だと思いますか?直営店でなく、FC店でなく、第3の方法で出店しているケースが多いからです。日本と全く異なる海外の流通事情だからどうすれば出店を続けることができるのか・・・そんなことが理解できるようになります。

 

そして、アジアの小売店の店頭は日本と大きく違います!

 

海外のスーパー特に、東南アジアのスーパーに行ったことがある人は品切れだらけの店頭の売場の棚をみたことがありませんか?棚はガラガラだったり同じような商品でメーカーが違う商品が十何種類も同じような値段で1列ずつ並べられていたり・・・

 

「売れ筋商品はしっかり店頭で在庫を持って対応」なんていう日本の売場には、程遠い感じの売場を見られたと思います。

まだ海外の小売店を見に行かれていない人はこれから見にいかれたら、お店のメンテナンスレベルの低さに驚かれると思います。はっきり言って日本のスーパーの店頭のレベルは非常に高いです。アジアのスーパーは品切れだらけでメンテナンスレベルが低く、デパートのスーパーには同じような商品がブランド違いで1列ずつ並んでいたりする・・・そんな不思議な売場を見ることが出来ます。

 

そして売場にはプロモーターと呼ばれる、メーカー派遣の社員がたくさんいて自社商品の売場スペースを確保します。

スーパーやデパートの売場には大勢の販売員がいることにもきっと驚かれます。日本の小売業に存在する棚割りというものは一切守られず、というかそもそも棚割りが存在していないため、プロモーターとルートセールスで売場の棚の場所の取り合いをします(笑)

 

ちょっと管理レベルの高いスーパーには棚割りが存在するために、品切れが多くて棚がガラガラになっていたりします。日本では考えられないほど売場が荒れています。それは欠品率が非常に高いという背景があります。というより日本の納品率が異常に高いのです。

 

1990年代のシンガポールやマレーシアのスーパーの納品率は20%程度でした。2012年にラオスの大手小売チェーンの社長から、納品率20%の現状を何とか改善したい、という話をもらいその対策をラオスの首都ビエンチャンでアドバイスしたことがあります。1990年代に海外で20%の納品率を2年で80%まで持っていった経験があったのでその話をラオスの小売チェーンの社長にしたら非常に喜ばれ、幹部社員を全員集めるからみんなの前で説明して欲しい・・・と言われ、皆さんの前で2時間ほど講義をしました。20%から80%まで納品率を上げた時の、その当時採用した数々の対策の説明をしました。

 

小売が発注しても商品が簡単に入ってこない、という理由から小売が定番管理をするという概念がなかなか浸透しにくい状況があります。

品切れが多いのは小売とメーカーの両方に問題があります。両方とも数量を正しく出せないため品切れが多発しています。発注数量を決める公式を小売もメーカー側も知らないため毎月20ケース売れる商品を在庫が切れても毎月20ケースしか製造しないため、品切れが続いているだけなんですがチャンスロスより廃棄ロスのほうをメーカー側が恐れるため常に品切れさせる傾向にあります。

 

普通に小売で使われる発注数の公式、『発注数量=A+B+C-D』を小売の担当は理解できないため、正しく発注できないので品切れが続いているという理由もあります。

 

A:最低在庫量
B:オーダーサイクルの予測売数
C:リードタイムの予測売数
D:在庫数

 

そして商品がうまく入ってこないので、結局プロモーターとルートセールスが勝手に発注したり、店頭の空いているスペースに商品を勝手に並べたりする形になっています。勤勉な日本人ならすぐ改善を・・・となるのですが現地ではメーカーの配給を受けている状態の小売店がいくら頑張って発注しても、発注数量を納品してもらえず、納品するメーカーは大量の返品を受けるため数量を絞り込む・・・・そのイタチごっこが続きます(笑)

 

小売が返品をやめれば話が早いように思われる人もいると思いますが、返品をやめた小売には日付の古い商品や他の会社から返品された商品や傷んだ商品が大量に送り付けられて来るのでなかなか簡単な話ではないのです。性善説の日本では考えにくいのですが、返品しないスーパーが登場すると各社の営業は、これ幸いと不良在庫を大量に送りつける店ができたと社内で連絡をするため、どんどん不良在庫が集中する店になってしまうのです。(笑)

 

そしてプロモーターとルートセールスによる、棚の奪い合いだけでなく商品の押し込みあいという背景から、同じような商品(例えば麺つゆ)が、同じような値段で十何種類も1列ずつ並べられている不思議な売場ができあがります。

海外の日系デパートの売場を見たことがある人は一体全体なんでこんな非効率なことをしているのか不思議に感じられたと思います。日本的に考えれば、「売れ筋に絞り込んで在庫をしっかり持てば売上が上がるのに・・・」となるのですが、そういう理由で海外ではそんな理想的な売場と正反対の売場が出来上がっています。

 

その理由は実は単純で、いつも品切れが起こりお客さまに叱られるから多くの仕入先から似たような商品を納品させることで、欠品を防ごうとしているためです。

そのため、納品会社には新商品が喜ばれる傾向があります。特にデパートの売場は納品会社が勝手に自分で発注して新商品を売場に押し込めるので麺つゆなどブランド違いの同じような商品が10種類も20種類も平気で1列ずつたくさん並んでしまいます。(笑)売場の効率や生産性など日本のきめ細かい小売のような管理はとてもできていません。海外でそこがしっかりしているのは最近増えている日系コンビニくらいです。日本も昔はそうでしたが、お店のスタッフが発注数量を管理する、という概念がありませんでした。

 

1980年代の日本のスーパーは大手スーパーでも普通に店仕入れがありルートセールスが商品を自分で持って行き自分で在庫を見て伝票を手書きで書いて納品していました。アジアのお店は、まだそんな日本の1980年代の対応をしている店がたくさんあります。小売に棚割りはない、商品を発注しない、陳列しない・・・こういうことを知らないで海外の小売店に一生懸命営業する日本のメーカーさんがたくさんいます。

 

こんな状況を知っても、まだ海外で小売店に営業しようと思いますか?

 

そうなんです!海外で営業するのは小売店ではないのです。欧米の小売は寡占化が進んでいます。日本は多少寡占化が進んでいますがまだまだ小売の寡占化は進んでいなくて日本最大のスーパーのイオンリテールとイトーヨーカ堂の合計でさえ市場のわずか23%弱です。海外では、日系小売チェーンの売上構成比は市場の1%もありません。アジアの小売は全く寡占化が進んでいなくて小さなパパママ・ストアがたくさんあります。その国の全土にある小さなパパママ・ストアや地方スーパーにあなたの商品を届けることができるような安定した商品供給ができるパートナーと一緒に仕事をすることが安定した商品供給の第一歩です。

 

アジアの国の小売は、まだまだパパママ・ストアが多くて、そんなお店に本気であなたの商品を並べていこうと思うのなら、しっかり準備をする必要があります。中国や台湾や韓国の食品メーカーはどんどん現地対応していて、どこに行っても商品が並んでいます。

 

そんな状況を打破するために、日本のメーカーさんや物販チェーン店さんにぜひ頑張って欲しいです。

 

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結論から申し上げますと、食品輸出成功のキモは「食品添加物の海外対応」と「販売期限の海外対応」です。日本と海外では使える食品添加物が異なります。海外主要18カ国で使える食品添加物の種類は平均307であり、日本は828です。日本の仕様のままでは例外規定のある国か運用ルールの厳しくない国(香港・シンガポール・マレーシア・カンボジア等)にしか輸出できません。特殊な日本の消費者向けの賞味期限をグローバルな形に修正する必要もあります。詳しくは下記から学んでください。