日本食品を海外で定番化できない理由
海外に日本食品を売ろうとして、展示会や海外物産展に出品したことがあるメーカーさんは多いです。
しかし、残念ながら海外の店頭で定番化できずに、コストをかけて失敗している企業さんが多いです。その理由はいくつかありますが、間違ったアプローチをしていることが原因です。
海外で定番化できない原因は大きく分けると下記の3点です。
⑴定番化できる顧客に営業していない
⑵海外営業に必要な情報を記載した営業資料を使っていない
⑶海外で売れる商品を営業していない
ひとつずつ説明してきます。
⑴定番化できる顧客に営業していない
日本食品を国内で売るとき、食品メーカーさんは主に2ヶ所に営業されますよね。それは、卸と小売です。卸と飲食店、とも言えます。自社のメインターゲット・エンドユーザーとなる消費者に一番近い小売業や飲食店、そしてその会社に売ってくれる卸売販売店です。
ところが海外に売る際、全然そのような営業をされていません。日本食品を定番化するには、海外のエンドユーザーに一番近いのは海外の小売店と海外の飲食店です。もちろん自社で営業にいく訳にはいきませんが、その海外の小売店や飲食店に商品を販売しているのはディストリビューターです。そのディストリビューターには少なくとも営業をする必要があります。特に海外では棚貸し(ラックジョバー)が一般的なので小売よりもディストリビューターのほうが力があります。一部のチェーン店を除けば、品揃えも発注も伝票作りも店頭在庫管理もディストリビューターがやっています。そのディストリビューターに直接営業しないのは非常に不思議です。ほとんどの食品メーカーさんは国内の展示会や商談会に行政機関に招待されて日本にやってくるディストリビューターに会場でしか商品提案をされようとしません。一度名刺交換をしたならどんどん商品を紹介すればよいのです。
日本国は農産品を一生懸命輸出しようとしていますが、展示会には力を入れても、その展示会にやってくることは絶対にない海外の農産物のディストリビューターに直接営業するという発想さえないので、全く営業していません。海外では農産物の輸入枠が決まっている国が多く、その枠を国毎に調整して輸入しているのは農産物のディストリビューターなのに、そこに営業に行くことさえしないから驚きです。本当に農産物を輸出する気があるのでしょうか?海外の日系小売チェーンで物産展をやっても定番化できないのです。海外への食品輸出のバリューチェーン全体を経験したことがないアドバイザーや展示会で売るのが基本の産業財(大型機器やプラント)の輸出経験者を大量に採用して無料でアドバイスをするからそんなことになっています。さっさと農産物のディストリビューターに直接海外に出かけて営業すればよいのに、国際営業方法を知らないからみんな手を出せないのです。
具体的には
①輸出諸経費を最低化したC&FやFOBでの輸出価格の見積もり
②売手が圧倒的に英文契約書の作成と締結方法
③国際売掛取引のノウハウ
④輸出実務経験
ができないからです。
そして行政の補助があるからと聞いて、何の準備もしないで海外の展示会に出展して成果がでない食品メーカーさんも多いです。
輸出用の営業資料もなく、英文の契約書も準備しないで、海外の企業と直接取引できる訳がないのです。それなら日本の輸出商社に営業したほうがましです。行政に言われて海外の提示会に出展しても興味を持ってくれるのはディストリビューターではない一般人です。そんな人が販売先になるのかならないのかも分からない状態で海外まで出かけて成果もなく帰国されます。そして行政機関の言われるまま対策として海外の小売店頭で催事を行い、日本国内の指定した倉庫に商品を届けて、海外で1回だけ販売して定番化できず終わり嘆いている食品メーカーさんだらけです。
海外のディストリビューターに直接売っていない、直接商品提案していない・・・これが1つ目のポイントです。海外の展示会や物産展に出るなら国内の輸出商社に輸出用営業資料をしっかり用意して営業したほうが輸出の話は進みます。これが1つ目の原因です。
⑵海外営業に必要な情報を記載した営業資料を使っていない
輸出するには、輸出用の営業資料が必要です。国内の営業資料とは異なります。この輸出用の営業資料を作らずに海外に営業しようとするから売ることはおろか、初期段階の検討の土俵にも乗ることができません。
仮にあなたの会社にマレーシアの地方都市から営業マンがやってきて、倉庫だし価格で条件提示をされてもその原材料の購入を検討できますか?
少なくとも、日本の倉庫渡し価格がないと価格のイメージができないですよね・・・そんなことも条件提示しないで、海外に商品を売ろうとするから販路が広がらないのです。相手はプロのディストリビューターなら、少なくとも輸出に必要な条件が全て記載された情報を渡さないと、輸出商社は商品紹介さえしてくれません。サンプルをどんどん送っても、必要な条件を提示しないと、そもそも紹介さえしてもらえないのです。
海外で売るには、海外で売るために必要な情報が載っている営業資料を使って営業する必要があるのに、そんなことさえしていない・・・・これが2つ目の原因です。海外の物産展に商品を国内渡しで売っても、定番化の何のノウハウもたまりません。
⑶海外で売れる商品を営業していない
海外で商品を売るには、海外で売れる商品を紹介する必要があります。海外の消費者は日本の消費者と異なります。海外に住んでいる日本人に売るなら、日本のスーパーやディスカウント店で売っている商品を紹介すれば良いですし、そんな商品は既に海外でたくさん売られています。一部の大手メーカーさんの商品です。輸入の規制の少ない国の日系デパートでは単価の高い日本食品も売られていますが、その市場規模は小さいです。
輸出商品をそんな小さい市場に売ってもたかが知れています。売るなら、爆発的に人口が増えているアジアの中間所得層に売るべきです。一定の所得がある人口が爆発的に増えているのでこちらの市場は将来性があります。ただし、日本語が読めません。一部の中華系の方が少しだけ理解できる程度です。
更に、賞味期限の問題があります。賞味期限が短いとすぐに小売店頭で棚落ち(海外は有効期限表示の国が多く、賞味期限と消費期限の概念がなく同じ扱い)します。有効期限の2ヶ月前に棚から撤去されるのが一般的なので、賞味期限の2ヶ月前にはもう売ることができなくなってしまうのです。それなのに日本的な価値観が世界共通だと信じて一所懸命賞味期限3ヶ月や4カ月の商品を売ろうとする食品メーカーさんが多いです。
海外は表示ルールも管理ルールも異なるので海外の価値観で求められる表示をしてから売る必要があります。日本人にだけ売っている商品を海外用に変化させてから売る必要があり、一部の食品メーカーさんは既にその対応を進めて成功されています。
日本で売っている商品をそのまま価値観の違う海外に売りつけようとしても売ることはできないのですが、売りつけようとしている食品メーカーさんが多いので定番化ができないのです。これが3つの目の原因です。